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春といえば、学生の音楽団体にとっては発表会や定期演奏会のシーズン。自分の高校時代の吹奏楽部も、定期演奏会は毎年3月に開催されていた。 高校入学年の春、自分が進学する高校の吹奏楽部の定期演奏会を聴きに行った。そこで演奏されたメイン曲が、今回エントリーする「ドラゴンの年」。高い技術力を要するこの難曲を見事に吹ききった当時の先輩方の演奏に感動し、吹奏楽部への入部に期待を膨らませていた頃を思い出す。 この曲は元々ブラスバンド(金管バンド)編成のオリジナル曲で、英国出身の作曲家、フィリップ・スパークの作品。彼の手によって吹奏楽への編曲版が出版された事で、日本のプロアマの吹奏楽団も演奏会で取り上げる機会が増えた人気曲だ。 久しぶりにこの曲が収録されたディスクを取り出して聴いてみると、高校時代の感動を上回る曲であった事に改めて感動。ここ2週間程、ipodでも毎日のように聴いていた。この曲がブラスバンド史に残る傑作である事を聴く度に思いを強くした。今宵はそのディスクをエントリーしたい。 ○ハワード・スネル指揮 ブリタニア・ビルディング・ソサエティ・バンド ('92年7月録音、BBCスタジオ7にて収録、DOYEN輸入盤) 名盤と言い切れるディスクだと思う。演奏団体のブリタニア・ビルディング・ソサエティ・バンド(以下、BBSBと表記)はブラック・ダイク・バンドや、グライムソープ・コリアリー・バンドの2大ブラスバンドの陰に隠れてしまいがちだが、創立100年以上の歴史を持ち、過去より多数のコンクール受賞歴を誇る名門バンド。個人的にはコルネットセクションの柔らかなサウンドが、両2大バンドに勝るとも劣らず気に入っている。良い意味で英国らしい音色を持った団体だと思う。 この曲はブラスバンドならではの編成を活かした機動性に富む作品で、3楽章からなる。1、3楽章は、金管のエッジを効かせた奏法が、ショスタコーヴィッチ作品と通じるものがある。全体にわたって緊張感が漲り、1楽章はタイトルでもあるドラゴンを表現しているような不気味さが漂う。 特に3楽章は金管の技巧の限りを尽した超絶技巧が要される楽章。後半の展開はまるでショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」のようなサウンドが押し寄せてくる。この難易度の高い楽章を一糸乱れぬ技術力で、完璧に吹ききったBBSBの演奏は、まさに凄いの一言に尽きる。 しかし、この作品での感動部分はもう一つあった。それは教会で流れる讃美歌のようなハーモニーの2楽章。心が洗われる美しさ。中間楽章でありながら、ある意味、この曲の核心をなしているといっても過言ではない。同属楽器の音色が溶け合い、こんなにも美しいハーモニーを奏でるとは!スパークが、どんな思いでこの楽章を作ったのかが知りたい所だ。癒しも感じさせるこの2楽章は、通勤時間に聴くipodでも、自分の中で最もリピート率の高い楽章となった。 ここでの金管の処理の巧みさは、元ロンドン響の首席トランペット奏者で、'78年に退団後、指揮の世界で活躍している指揮者のハワード・スネル(画像:下)の手腕による所も大きいと思う。実際、この録音年にヨーロッパ選手権で優勝という快挙を成し遂げている。これぞブラスバンドの真骨頂と呼べる名演! ちなみに、タイトルである「ドラゴンの年」は日本の「辰年」に作られた曲、という意味ではなく(^^;、英国ウェールズの紋章である「レッド・ドラゴン(赤い龍)」を指す。ディスクのジャケット(画像:上)の龍が赤い色なのも、そういう意味からだろう。ウェールズを代表するブラスバンド、「コーリー・バンド」の創立100周年を記念する委嘱作品で、'84年に作曲された。当時、全英ブラスバンド選手権において2年連続優勝という実績もあり、まさに「ウェールズ=赤い龍=ドラゴン」の「年」となる快挙の意を込めた作品だ。 |
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